土でできた塔の中を、空気がゆっくり巡ります。しかも、昼と夜では向きが逆になります。南アジアのシロアリ、Odontotermes obesus の塚では、外側と中央の暖まり方の違いが換気を支えています。温度の変化と空気の動きを、断面図で見ていきましょう。
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結論|昼夜の変化が、内部の循環を生む
外側の細い通路と、厚みのある中央では、暖まる速さも冷える速さも違います。その温度差が空気の循環を生み、地下の巣で生じた CO₂ を表面付近まで運びます。最後は、土の壁にある細かなすき間を通じて外気とガスを交換します。
出典:Wyss Institute(2015)|Termite mounds could inspire new ideas for sustainable building ventilation
仕組みを5つに分けて見る

① 昼と夜で気温が変わる
塚を取り巻く環境は、一日中同じではありません。昼は暖まり、夜は冷えます。この繰り返しが、塚の中で空気を動かすきっかけになります。外気の変化をただ遮るだけでなく、その変化を利用しているところが面白いですね。
出典:Wyss Institute(2015)|Termite mounds could inspire new ideas for sustainable building ventilation

② 薄い外側が、先に変わる
外側に張り出した薄い部分と、厚みのある中央では、熱への反応が違います。外側は早く暖まり、早く冷えますが、中央の変化は緩やかです。この形の違いが、同じ塚の中に温度差をつくります。図の温度計は、外側と内側(中央)の通路につながっています。太陽と月の切り替えに合わせて、昼は温度が上がり、夜は下がります。外側が先に反応し、内側がゆっくり追いつく様子を表しています。左右の時間差は違いが伝わるように強調した模式表現で、温度や変化の速さの実測値ではありません。
出典:King・Ocko・Mahadevan(2015)|Termite mounds harness diurnal temperature oscillations for ventilation

③ 昼は外側を上がり、中央を下る
昼に外側の通路が中央より暖かくなると、そこで暖まった空気が上がります。通路は上部で中央につながっているため、空気は中央を下ります。開いた煙突から外へ抜けるのではなく、内部を輪のように巡る流れです。

④ 夜は、流れが逆になる
夜になると、外側が先に冷えます。今度は外側を下り、比較的暖かい中央を上がる流れになります。調べられた塚では、この夜の循環が地下にたまった CO₂ を上方へ運び、混ぜる役割を果たしていました。昼と夜に同じ強さで換気されるわけではありません。
出典:King・Ocko・Mahadevan(2015)|Termite mounds harness diurnal temperature oscillations for ventilation

⑤ 壁を通して外気と交換する
通路を巡るだけでは、CO₂ は外に出ません。表面まで運ばれたガスが、細かなすき間のある壁を通じて拡散することで、外気との交換につながります。「塚の中を運ぶ」と「壁を越える」は、別々の役割を担っています。
出典:Wyss Institute(2015)|Termite mounds could inspire new ideas for sustainable building ventilation
シロアリが、空気をあおいでいるわけではない
流れを生み出す主役は、温度変化と塚の構造です。研究者は塚の中の空気の速さや向き、温度、CO₂ を直接測って確かめました。説明図の矢印はその関係を読み取りやすくしたもので、特定の塚の流速や通路をそのまま再現したシミュレーションではありません。
出典:Harvard SEAS(2015)|How termites ventilate
よくある疑問
すべてのシロアリ塚で同じ?
種や環境によって違います。アフリカの Macrotermes michaelseni を調べた研究でも温度変化に伴う流れは確認されましたが、日射の受け方や CO₂ の分布は今回の種と異なりました。本記事では、測定された O. obesus の仕組みに対象を絞っています。
出典:Ocko ほか(2017)|Solar-powered ventilation of African termite mounds
風が吹けば換気される?
風の影響を、どの塚にも同じように当てはめることはできません。今回の研究対象では、昼夜の温度変化と塚の内部構造によって流れが説明されました。ただし、別の種や開けた土地の塚まで「風は無関係」とは言い切れません。
出典:Ocko ほか(2017)|Solar-powered ventilation of African termite mounds
建築にも使えるの?
環境の温度変化と、形や材料の性質を組み合わせて空気を動かす考え方は、建築へのヒントになります。ただし、塚の形をまねるだけで人の建物に十分な換気が生まれると実証されたわけではありません。気候、建物の規模、人が出す熱や CO₂ に合わせた検証が必要です。
出典:Harvard SEAS(2015)|How termites ventilate
まとめ
形によって暖まり方を変え、温度差によって空気を動かします。シロアリ塚の換気を支えるのは、通路のつながりと土の壁、そして昼夜の変化の組合せです。

参考資料
- King・Ocko・Mahadevan(2015)|Termite mounds harness diurnal temperature oscillations for ventilation
- Harvard SEAS(2015)|How termites ventilate
- Wyss Institute(2015)|Termite mounds could inspire new ideas for sustainable building ventilation
- Ocko ほか(2017)|Solar-powered ventilation of African termite mounds
資料確認:2026年10月24日。図は研究に基づく模式表現です。色・粒・矢印の速さは実測値ではありません。主図の基礎イラストはAI生成し、図・文字と動きは個別に組版しています。


