ふだん使う椅子なのに、なぜ完成した形で届けないのでしょうか。HAYのPack Chair(パックチェア)が組み立て式なのは、品質やデザインを保ちながら、コンパクトに届け、より多くの人が手に取れる一脚を目指したからです。公式情報と動く図解で、その工夫を見ていきます。[1][6]

結論|良い椅子を、コンパクトに届けるため
Pack Chairの組み立て式構造は、届け方から考えた設計です。部材を分けて梱包し、使う場所で組み立てる。HAYが掲げたのは、品質や設計の意図を損なわず、手に取りやすい椅子をつくることでした。[2][6]
Pack Chairの仕組みを5つに分けて見る
1.部材を分けて、小さく運ぶ

完成した椅子は、脚と脚の間や背もたれの前に、大きな空間を抱えています。一般に、その形を保って箱に入れると、部材そのものより広い梱包スペースが必要になります。
Pack Chairは、部材を分けてまとめる「フラットパック」で配送されます。名前のPackも、この梱包方法に由来します。[5]図の薄い箱は考え方を示したもので、実際の箱寸法や体積の削減率を表したものではありません。
2.使う場所で、椅子の形に組み立てる

組立の中心になるのは、座面、前脚2本、背もたれと後脚がまとまった部材です。公式動画では、座面を裏返して前脚を固定し、続いて背と後脚の部材を取り付け、椅子を起こしています。[4]
GIFでは部材の関係を見やすくするため、椅子を起こした向きで順序を示しています。差し込むだけで完成するという意味ではなく、実際にはねじの固定が必要です。組立時は公式動画と付属の説明書を確認してください。
3.再生プラスチックと木材を組み合わせる

4.カバーの縁を、座面の溝に留める

生地張り仕様のPack Chair 11では、座面の縁にある溝にファブリックカバーをはめ込む工夫があります。座面の端を、カバーを留める場所としても使っているのです。[1]
ユーザー自身が張りの仕上げに関わる点も、この椅子の特徴です。この説明は11の仕様で、プラスチック座面の10すべてにカバーが付くという意味ではありません。図は留め方の概念を示しており、溝の正確な断面形状は省略しています。
5.分解・交換・修理を考えて、長く使う

使う場所で組める構造は、その後に分解することにもつながります。HAYはPack Chairについて、分解、部品の更新、修理を考慮した設計だと説明しています。[2]
傷んだ部分に手を入れ、使い続けることまでを視野に入れた椅子です。なお、交換部品の販売範囲や取り寄せ方法は、この設計意図だけでは判断できません。実際の修理は購入先やHAYに確認する必要があります。
展示会ではどう紹介された?
今回はPack Chairの購入者による使用レビューを確認できなかったため、現地展示会の取材レポートを紹介しました。長時間の座り心地や、自宅での組み立てやすさを評価したものではありません。
親しみのある形を、工業生産でつくり直す
出発点は、モリソンのスタジオに置かれていた小さな椅子の模型でした。それを見たHAYの共同創業者ロルフ・ヘイとのやり取りから、伝統的なトラットリアチェアをフラットパックにする構想が育ちました。[2]
食堂で見かけるような、気負わず使える椅子の姿を受け継ぎながら、材料や生産、配送の方法を組み替える。図解屋では、ここにPack Chairの面白さがあると考えます。目立つ機構を見せるよりも、日常に馴染む形の中で、つくり方と届け方を変えているのです。
椅子の形と構造の関係は、「Yチェアはなぜあの形なのか?」でも図解しています。
デザインの考え方を、もう少し知りたい人へ
日常に馴染む形の中で、何を変え、何を残すのか。その視点を深める一冊が、深澤直人とジャスパー・モリソンの共著『Super Normal: Sensations of the Ordinary』です。身の回りの204点のものを通して、ふだんの道具にある良さを見つめる本です。[8]
よくある疑問
Pack Chair 10と11は何が違う?
基本の違いは座面です。10はプラスチック仕様、11は生地張り仕様。日本での発表では11は受注生産とされています。[5]
折りたたみ椅子とは違う?
Pack Chairは、部材を組み立てて使うフラットパックの椅子です。同時に発表されたBackflip Chairは、組み上がった椅子を折りたたんで収納する別製品です。[5]
大きさと日本での発売日は?
HAY JAPANの掲載寸法は、高さ78×幅45×奥行45cmです。日本での発売は2026年10月30日の予定と案内されています(2026年10月4日確認)。[6]
まとめ|座る前と、使い続ける時間まで設計する
Pack Chairが組み立て式なのは、良い椅子をコンパクトに届け、長く使うことまで考えたからです。
- 部材を分けて梱包し、使う場所で組み立てる。
- 座面・背の材料と木の脚を組み合わせる。
- カバーの仕上げや、分解・修理も設計に組み込む。

参考資料・出典
- HAY JAPAN|PACK CHAIR BY JASPER MORRISON
- HAY|Pack Chair by Jasper Morrison
- HAY|Pack Chair 10(製品・組立動画への案内)
- HAY|Pack Chair 10 Assembly Video
- 株式会社ウェルカム|Pack Chair発表(2026年9月4日)
- HAY JAPAN|2つの新しいチェア、発売
- DNP|3daysofdesign 2026レポート Vol.2
- Lars Müller Publishers|Super Normal
確認日:2026年10月4日。図解は公式資料を基に制作した模式図で、組立説明書の代わりではありません。


